(取材日:2010年1月20日)
◆おいしい赤味噌をつくる蔵は、岡崎だけにあらず。
寒い冬は暖かい食べ物が恋しくなりますよね。鍋やラーメン、味噌煮込みうどん......。ああ、お腹すいてきた......。
愛知県の味噌の生産量は、全国第2位。おもに「豆味噌」――通称・赤味噌の生産が盛んです。醤油については全国第3位で、こちらは「たまり」「白醤油」の醸造が中心。味噌煮込みうどんに使うお味噌は、この地方ならではの赤味噌。赤味噌といえば岡崎・八丁味噌が有名です。しかし、赤味噌は何も岡崎だけでつくられているわけではありません。以前、テレビの地元グルメ番組で味噌煮込みうどんのおいしいお店が紹介されていたのですが、その人気店が使っている赤味噌は、じつは知多郡武豊町にある醸造蔵のもの。武豊町の赤味噌! これは気になる。武豊町には昔ながらの味を守る味噌・たまり蔵が6つあるようです。そしてさらに調べると、味噌・たまり蔵をたどる散策路まであるじゃないですか。というわけで、今回は、武豊町の味噌・たまり蔵と味噌を味わう旅に決定~!
JR武豊駅から徒歩約5分。武豊町にある6つの味噌・たまり蔵のうち、小迎地区にある「中定商店」を訪ねてみました。創業は明治12年。今年で130年の歴史をもつ醸造蔵です。『宝山味噌』『まるさ溜醤油』のブランド名で豆味噌とたまりを醸造しています。
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中定商店は、かつて食塩の倉庫として使っていた蔵を改装し、過去に使用していた味噌・たまりの醸造用具や貴重な資料を展示する『醸造伝承館』を併設しています。一般公開しているので、1週間ほど前までに事前予約すれば、現在、醸造に使っている蔵の中とともに見学することができます。「こんにちはー」とお店に入ると、店主の中川安憲さんがステキな笑顔で出迎えてくださいました。
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以前は会社勤めをなさっていて味噌とは無縁の生活だったそうですが、初めてここの豆味噌を味わったとき、素直に「おいしい!」と感動したのだそう。ところで岡崎の味噌と武豊の豆味噌、違いはどんなところにあるのでしょうか?
「原料や熟成期間は同じですよ。味噌蔵によっても違うので断言するのは難しいのですが、大まかに言うと、味噌玉の大きさと、仕込みのときの水の量が違います。味噌玉が大きいと乳酸菌の量が増え、それだけ酸味が強くなるんです。八丁味噌の味噌玉は大きいので、武豊の味噌に較べると酸味が強いですね。そして武豊の味噌より仕込み水の量が少ないので、八丁味噌は硬く、また、味に渋みがあります。武豊の豆味噌は、岡崎の豆味噌と比較して酸味が少なく、マイルドな味わい。初めて豆味噌を食べる人にとっても、なじみやすい味だと思いますよ」(中川さん)
現在、中定商店で豆味噌・たまりづくりの職人としてたずさわる男性は、お父上と中川さんの2人のみ。ほとんどが手作業で力仕事も多いのですが、店主を務めるようになって6年、今ではお店で直接お客様の声を聞くことができ、それをもとに味を改善してみるなど、「味噌づくりが楽しい」とおっしゃいます。
◆味噌・たまりの工場に潜入!
ではさっそく工場のほうから見せていただきましょう。
「今日はちょうど味噌玉麹ができあがった日なんですよ。どうぞ覗いてみてください」と、中川さん。そっと覗かせていただくと、できたてほやほやの味噌玉麹がぎっしり。味噌玉麹は、大豆を蒸して味噌玉をつくり、その表面にわずかな麹をつけたあと、約2日間かけて多量の麹菌を繁殖させたものです。
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次に熟成用の木桶に味噌玉麹を移し、塩と水を加え、最後に重石を乗せます。そして2~3年熟成。大豆、天然塩、水以外は無添加で、余分なものは何も使いません。中定商店では3種類の豆味噌をつくっていますが、仕込み年数や素材分量の微妙な使い分けで、作り分けています。
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大きな味噌桶が並ぶ工場を奥へと進むにつれ、味噌やたまりのいい香りが漂ってきて鼻腔をくすぐります。この香りだけでもじゅうぶんご飯が食べられそう! 大豆を蒸す、味噌玉に麹をつけるなど、一部の作業は機械化されていますが、あとは昔ながらの製法を受け継いでいるため、工場の中は、どこを切り取っても絵になる感じ。趣があって素敵です。味噌桶は、杉でできています。
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味噌桶の梯子を登り、「これ、よかったらちょっと舐めてみませんか?」とおっしゃる中川さん。豆味噌を熟成する過程でじわじわと染み出してくるのが、たまり。味噌桶は大きいものの、下にたまる"たまり"はごくわずかという貴重品です。写真は、たまりを柄杓ですくい、再び味噌の上からかけている様子。これを毎日繰り返して、おいしい豆味噌とたまりができあがっていくのです。お言葉に甘え、いいかんじに醸造されつつあるたまりをぺろっと舐めてみると......ん!お~いしい!! 最初は一瞬、濃いかな?と感じるものの、その後、不思議なことに舌に残るのはさっぱりしたうまみと甘み。見た目に反して塩辛くはなく、むしろやさしい甘さを感じるのにはびっくりです。
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「見た目の色が濃いし、これだけを舐めると最初は味も濃く感じるかもしれませんが、焼いたお餅なんかにつけて食べてみると、本当においしいんですよ。豆味噌もそうですが、たまりは大豆のうまみ成分がほとんどで、塩分はじつは少ないんです。むしろ色の薄い醤油は、色が濃くならないように塩分を多くしています。たまりは、そういう意味でもヘルシーなんですよ」(中川さん)
そうか......。味噌と醤油は、見た目だけで判断しちゃいけないのね。
こうして手塩をかけてできあがった中定商店の製品が、こちら。人気の味噌は、国産大豆を使った3年熟成タイプのもの。コクが深く、食べごろの味噌だそうです。取材中も、ご近所の方が続々と買い求めに訪れていました。よりあっさりした味わいを好む人は2年熟成タイプを求めていくそうです。
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◆醸造伝承館は貴重な資料の宝庫。
さて、そもそも武豊町はなぜ味噌・たまりづくりが盛んなのでしょうか? 大きな理由の1つは、交通の便が発達していたことにあったようです。明治19年に旧国鉄の武豊線、同じく32年に外国貿易港として武豊港が開港し、原材料の入手や製品の輸送において、早くから恵まれた環境にありました。温暖な気候も手伝って、知多エリアは千葉の銚子、兵庫の龍野と並び、味噌・醤油の日本三大醸造地として挙げられています。
『醸造伝承館』には、この地方の醸造の歴史や、かつて味噌・たまりづくりに使っていた道具などが所狭しと展示してあります。愛知県内で現在営業している醸造蔵のたまり瓶がすべて展示してあったり、レトロなラベル、実際に使っていた台帳など、貴重な資料がいっぱい。
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テコの原理を利用した古い搾り機は、実際に触って動かすこともできるんですよ。
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醸造伝承館を見学し終わってふと外を見ると、なにやら不思議な物体を発見。近づいてみると......「水琴手洗処」の文字。ということは!?
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「ええ、父がこういうことが好きでつくりました。古い味噌桶を再利用したお手洗いです」(中川さん)
中を見せてもらいましたが、中は普通の水洗トイレ。ただ、水琴窟が横にあり、その音が中まで響く仕掛けになっているため、きれいな音を楽しみながら利用することができるのです。おもしろい!(笑)
中定商店の味噌は、現時点では併設の直営店『本蔵』か、同店ホームページ、ごくわずかの限られたスーパーでしか入手できません。ぜひともこの味噌を味わいたい!という方は、やはり醸造蔵を直接訪れてみることをオススメします。残念ながら土・日はお休みですが、工場と醸造伝承館見学も含めれば、訪れる価値は十分。美味しいもの大好きな人は、ぜひ、大人の社会見学に出掛けてみてくださいね。
(後編に続きます!)
【問い合わせ先】
「中定商店」
住所:知多郡武豊町小迎51
TEL..:0569-72-0030
ホームページ:http://www.ho-zan.jp/
営業時間:「醸造伝承館」9:30~17:00(入館無料・要予約)、「本蔵」9:00~18:00
休業日:いずれも土・日曜日、お盆、年末年始
に掲載されています。
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加藤俊男 | 2010年2月 8日 09:38 | 返信
日頃何気なく使っている味噌・たまりの有難さが解かる。このブログドラマによく表現されていますね!
「味噌・たまりの香りがたまらない!! 武豊町"みそ蔵の小径"」タイトルもよいですね!
コメント、ありがとうございます。励みになります。
タイトルは、ついにダジャレ、オヤジギャグの世界に足を突っ込んでしまいました…。
今後さらに精進いたします。