「あいちアートの森」を歩く(2)~東栄町プロジェクト

投稿者名 : タケモト | 日時 : 2009年12月22日 12:00

(取材日 2009年12月12日)

愛知県内6か所で行われる芸術イベント「あいちアートの森」を回る旅。
第2回は北設楽郡東栄町で行われている「東栄町プロジェクト」に行ってみました。
名古屋広小路の都会から、山間の緑豊かな町へ。
廃校になった校舎や、天文台のある森の中の宿泊施設など、会場自体もとても気になります。

最初に訪れたのは「旧新城東高校本郷校舎」。
ここは、かつての本郷高校。2000年に新城市の新城東高校と合併し、本郷校舎として生徒達の学び舎になっていました。
2005年に生徒募集を停止して昨年3月に廃校となりました。
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正門の前に立ってみる。
休日の学校といった風情で、あまり寂れた感じはありません。

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駐車スペースに車を入れて車外に出ると、運動場から子供達が笑いささやき合うような声。
しかし、そちらに目をやると誰もいない。とても気になるが、ひとまず校舎の中から見てみます。
本郷校舎では体育館、図書室、標本室など、往時の教室名そのままのスペースにアーティストたちの作品が並びます。
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まず体育館に入ってみました。
中には体育館のステージを覆う巨大な作品。
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ステージの反対側にも。山本富章さんの作品です。
作品は4tトラック3台分に、2時間かけて積み込んで運んできたとか。
会場の本郷校舎を見て、20年ぶりに展示することに決めた思い出深い作品だそうです。
山本さんの20年と本郷高校時代から数えて60年の時の流れを吸収してそびえる作品は、大きくて強烈な個性なのに、何だか優しく落ち着いて見えるのです。
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体育館横の体育準備室。
連なる白い風鈴は渡辺泰幸さんの作品です。
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気まぐれに吹く風で揺れ、歌いだす風鈴たち。
夏に鳴る鈴の音は心地よい涼を感じますが、冬の寒風の中で鳴り響く鈴の合唱は厳しい自然の主張のようで、力強さを感じます。
たくさんの短冊が一斉に同じ方向になびく様子は目を見張ります。
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かつて昇降口だったスペースは井出創太郎さんと高浜利也さんのプロジェクト「落石計画(おちいしけいかく)」の展示に使われていました。
「落石計画」とは北海道根室市にある「旧落石無線送信所跡」の廃墟を再生し、内部に銅版画を使った「茶室」を制作、設置する計画。
昨年から始動し、来年には茶室の外壁が完成する予定だという。
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井出さん(奥)と高浜さんが外壁や天井に使う銅版画を作成中。
「制作過程を見てもらいたくて、今回は昇降口にアトリエスペースを作りました」と井出さん。
落石計画は建物や地方の再生を目指し、新しいコミュニケーションのあり方を考えるプロジェクトなのです。
作品だけではなく制作風景も見学してください。
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左が外壁用。銅版画を貼った石で覆います。右は天井に貼る銅版画です。
「外壁を覆うためにはあと4000個は必要です。東栄町プロジェクトの期間中に500個は作りたいです」と高浜さん。
記者は北海道出身だけに、根室市の茶室が完成した暁には、見にいきたいと思いました。
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校舎1階に来ました。
用務員室の中を縦横に走る赤い木材は、磯部聡さんの作品。
細くしなる木材を支えているのは、用務員室のスリッパだったり、ビンだったり。
横を通るのも緊張します。
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2階の化学実験室。
マレーシア出身、名古屋造形大学で学んだタン・ルイさんの展示を見ながら、ふと足元に目をやると、映像を使った作品の前に「HOME」の文字。
床の埃を使って書いた字です。
ぼんやりしていると、見逃しかねないのが現代アートなのだ。
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階段に出ると、ごく普通の学校。窓の外を見ると、晴れやかな東栄町の風景。
校舎2階からは体育館の中の巨大な作品も、風鈴も見えません。
でも耳をすますと、風鈴の音が鳴り続けています。
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3階、教室には河村るみさんの作品がありました。
黒板の絵に、制作中の河村さんの動く姿が投影されています。
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標本室の今井瑾郎さんの作品。
杉と檜で作った大きなテーブルは「教室という名の彫刻」と名づけられています。
木の手触りが気持ちいいです。
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作品は階段にもありました。文谷有佳里さんの作品です。
踊り場に吊られた白い紙の上に、繊細な絵が描かれています。
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最上階の4階。
図書室を覗き込むと、本は1冊もなく、ねじれた木材が横たわっています。
これは木村充伯さんの作品。
よく見ると枝の先には、人や動物の顔が。
視線の先にある校歌を見ているのでしょうか。歌い出しそうで少し不安な気分に。

さて、先ほどから気になっていた運動場のささやき声の正体を探りに行きましょう。

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良く聴こうと、運動場の中に入ると「誰か来た!」と小さな声。
たちまち声はやみました。かわりに音楽が流れ始める。
運動場の中央で回る風車を見ながら、しばらく音楽を聴く。
運動場を出ると、音楽がやみ、またささやき声が始まりました。
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制作した寺井尚行さんに聴いてみたところ、これは「妖精の声」。
運動場の中心にある箱はセンサーになっていて、人がいないと妖精達は楽しそうに話し続けますが、運動場に一歩、踏み込むと口をつぐみ「人間用の音楽(これも近くの山が口笛を吹いているようで、面白いです)」を流し、息を潜めて観察しているのです。
でも元気な囁き声は運動場の外からでも、よく聴こえます。
妖精達との声のかくれんぼを楽しんでください。
この音楽を楽しめるのは毎週土曜日。時間は不定期で妖精達はおしゃべりしています。
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武道場に入ると、寺井さん(右)と木村純さんが木材と長い紐を持って、相談中。
これは1月23日に予定しているサウンド・インスタレーションの準備だそうです。
巨大な弦を張り、武道場全体を楽器に見立て、音楽を響かせようという大掛かりが企画。
今は試行錯誤の真っ最中。現代アートは体力がいるものなのです。

まだまだ紹介したい作品はあるのですが、アーティストの皆さんにお礼を言って次の会場に移動。

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東部小学校です。
13日に東部小講堂で開催予定だった磯部聡さんのワークショップ「光のクロッキー」は、インフルエンザによる学級閉鎖のため、来年1月に延期になりました。残念無念。
「光のクロッキー」は真っ暗な部屋の中で、ペンライトの光を使って絵を描きます。
子供達がしっかり風邪を治し、素敵な思い出を作ることをお祈りします。

さらに山道を走ること約20分。
「森林体験交流センター」に到着。「スターフォーレスト御園」の名前で親しまれています。
ここは天体観測など広く自然観察が行える公共宿泊施設(予約制)。
宿泊の方を対象に、望遠鏡の貸し出しやプラネタリウムの投影を行っています。
マウンテンバイク、パターゴルフ、バーベキューハウスなどは、宿泊以外の人も利用可能。

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6.5mのドームの天文台には、60cmの反射望遠鏡が見えます。
肉眼の7000倍の集光力。どんな星もコンピューターが素早く検索し、自動導入する最新鋭の望遠鏡です。
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入り口にはチェーンソーアートの彫刻。
そういえば東栄町はチェーンソーアートの聖地です。

ここには大河内俊則さんの作品があります。

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広場の北側、南側に立てられたスピーカー。
時折、大きさも高さも様々な音が響きます。いったい何でしょう。
スターフォーレスト御園の清水さんが、詳しく教えてくれました。
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この二点は経度が同じ。二つを線で結ぶと、北極点と南極点を結ぶ子午線に重なります。
その子午線の上を星が通過する度に音が鳴るのです。
より南を通過した星ほど低い音、北を通った星ほど高い音。
大きな音は明るい星、小さな音は暗い星です。
お話を聞いている最中にも次々に音が響きます。
「夜に肉眼で見える星が通過すると反応します。1日に約3000回は音が鳴りますよ」と清水さん。
自分の頭上と北極点と南極点を繋ぐ長い半円。たくさん通るのでしょうが、驚きました。
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しばらく二つのスピーカーの間に寝転がって、空を見ながら、「星の音」を聴く。
まだ日暮れ前で空の色は真っ青。
昨日は大雨だったので、少し尻が冷たいが、いい気持ち。
飛行機がゆっくり通過していきます。そのはるか上空を幾つもの星が通り過ぎているのです。

そういえば14、15日頃は「ふたご座流星群」のピーク。
もしかして、さらに大量の音の大洪水になるのでしょうか?
「流星は星ではないので、大丈夫です」と清水さん。
太陽系内の塵が地球大気に突入し、光って見えるのが流星なのだ。勉強になりました。

この作品は夜に星空を見ながら体験すると、さらに素敵な時間を味わえるはず。
宿泊以外で訪れた場合、通常は午後5時で閉館なのですが、今回のイベント期間中は、夜間も入場して「星の音」を楽しむことができます。
宿泊予約をして、天体観測とアート鑑賞を存分に楽しむのも良さそうです。

● スターフォレスト御園
TEL 0536-76-0687 FAX 0536-76-0686
  問い合わせは午前9時~午後5時。
水曜日、年末年始(12月29日~1月3日)は休館。

今回の東栄町プロジェクトは、耳で楽しむ作品が印象に残りました。
そういえば「あいちアートの森」のテーマは「五感で感じるアートの世界」。
見て、聴いて、触って、作品の世界に入ってください。

東栄町プロジェクトの今後の予定。
◆記念コンサート&山本富章「音楽とのコラボレーション」
2009年1月9日(土)13時30分~14時30分
旧新城東高校本郷校舎体育館
◆ ワークショップ&コンサート
2009年1月23日(土)13時30分~15時
旧新城東高校本郷校舎武道場
出演 寺井尚行、大河内俊則、木村純、細井博之

※ 12月13日(日)に予定されていた磯部聡「光のクロッキー」は、開催場所の東栄町立東部小学校がインフルエンザによる学級閉鎖のため、2010年1月24日(日)に順延。



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