(取材日:2011年1月13日)
◆世界のトヨタ、創業期の挑戦と苦闘の軌跡がここに
トヨタ鞍ヶ池記念館は、トヨタ車生産台数累計1000万台達成を記念し、1974年(昭和49年)9月に完成した建物。1999年(平成11年)トヨタ自動車が「第二の創業期」を迎えたのを機会にリニューアルした施設で、創業者・豊田喜一郎の創業期の挑戦と軌跡が、ここに集約されています。
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入口には派手な看板もなく、ひっそりと佇む施設なので、もしかしたらその存在に気がついていない人もいるかも? 場所は豊田市・鞍ヶ池公園、鞍ヶ池ボート乗り場の北側です。
トヨタ鞍ヶ池記念館は、3つの施設で成り立っています。中核施設は、豊田喜一郎の生涯と、トヨタ自動車創業期の歩みを紹介する『トヨタ創業展示室』。館内にはトヨタ自動車の所蔵絵画を展示する『鞍ヶ池アートサロン』が併設され、いずれも入場無料。記念館北側には豊田喜一郎の別荘宅を移築修復した『旧豊田喜一郎邸』があります。ではさっそくトヨタ創業展示室からお邪魔してみましょう。
入室して、まず目に飛び込んでくるのが、3台の実車展示。
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まずは1936年(昭和11年)、トヨタの記念すべき第一号乗用車「トヨダAA型乗用車」。1404台のみ生産され、現在はオリジナル車両が残っていないため、ここに展示されているものもレプリカです。ですが、このレプリカ製作のためにタイヤも改めてメーカーに特注するなど、じつはたいへんコストがかかっている車両。流線型のデザインは、それまでの"車は四角いもの"という固定概念を覆した点でも画期的でした。
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そうそう、創業期の車名は「トヨタ」ではなく、喜一郎氏の姓同様、「トヨダ」と濁点がついていたんですよね。トヨダAA型乗用車のエンブレムにあしらわれた社名も、漢字表記の「豊田」。1936年(昭和11年)、社章を公募した際に、見栄えのよさと画数(8画)のもつ意味・縁起のよさから濁点抜き・カタカナ表記のデザインが採用され、そこから初めて「トヨタ」に生まれ変わったのです。
背後に飾られた集合写真パネルは、喜一郎氏が豊田自動織機製作所勤務時代、社内で密かにメンバーを募って設立した「自動車部」設置当初のスタッフ。トヨタの自動車づくりは、ここから始まったんですね。新しい夢をカタチにし、実現させる仕事。自発的にやりたい!と思い、集まったメンバー。苦労は多くても、きっと楽しかっただろうなあ...。
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こちらは1955年(昭和30年)に発売された、わが国初の本格的国産乗用車「トヨペットクラウン(RS型)」。完成は喜一郎氏が亡くなった後でしたが、彼の遺志が受け継がれ、夢がカタチになった記念すべき1台です。
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この車両の背後にも、集合写真がありますね。こちらは挙母工場竣工日の、役員一堂の記念写真。右から2人目が喜一郎氏です。やはり一番誇らしげな表情をなさっていますね。
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そして、こちらは昨年11月から展示されているレーシングカー、「レクサスLF-A NO.14」。
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2009年のニュルブルクリンク24時間耐久レースを走った実車で、車体には傷や汚れ、応急処置のガムテープなどが残されたまま。レースにはトヨタ現社長の豊田章男氏もドライバーとして参戦したので、車体にはモリゾーとしてその名も入っていますよ(モリゾーは、章男社長の愛称)。
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◆豊田喜一郎さんのお人柄に、ホレボレ...
トヨタ創業展示室は、車両展示のほか、再現ものの展示物が充実しているのが特徴の1つ。専用シートに座ってヘッドフォンをつけ、ボタンを押すと、大きなスクリーンで創業期の映像『虹を架けた男たち 豊田喜一郎、夢への挑戦』がスタートしました。
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豊田喜一郎の一生を綴った、約15分の映像作品。2回の欧米旅行でニューヨークなどの近代都市交通を視察し、「世界に負けない自動車づくりをしたい!」という強い思いにとらわれる喜一郎氏。2回目の欧米旅行から帰国した後、メンバーを集めて自動車に関する調査研究を始め、小型エンジンのメカニズムの勉強や、シボレーの分解を始めます。「やれるやれないじゃない。誰がやるかが問題なんだ」「失敗しても、工夫を続ければ必ず成功に結びつく」。こうした熱い言葉だけでなく、自ら率先して現場に立ち、着実に夢を現実に変えていく姿を見て、にわかにファンになってしまったマツモト。今どきこんな男前な社長、いないんじゃないですか!?
映像コーナーは室内にもう1か所あります。ここで感動したのは、かつて喜一郎氏とともに仕事をした人々が語るエピソード。
「人に対して"お前"と言うのを一度も聞いたことがない。コラ!とも言わなかった。誰に対しても、いつもやさしく丁寧な言葉で話していました」「休日出勤でデスクに向かっていたら、ふいに肩を叩かれまして。驚いて振り向くと、喜一郎さんが立っていた。ご苦労さんと言われてすぐに去っていかれたんですが、そのあとしばらくすると、机にお茶とお菓子が届いたんです。守衛さんに"これ何?"と尋ねたら、"喜一郎さんに頼まれたんだ"と。そういうさりげない心配りをしてくださる方でしたね」――喜一郎さん! ステキすぎます!!
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「責任者は机ではなく、現場にいろ。自らが率先して動けば、下の者も助けてくれる」「失敗は心配するな。最後は全部オレが引き受ける」など、「この人にならついていきたい!」と思わせる言葉が続々登場。この哲学、この熱い魂あってこそのトヨタ誕生だったんですね。
創業期の悪戦苦闘を4つのジオラマに再現した『ラジオラマ』も必見です。こちらは"シリンダブロック鋳造の苦闘"の様子。エンジンづくりのうち、もっとも苦労したのがシリンダブロックの鋳造だったと言います。真夏の午後、油中子という部材の成分調整のため、汗だくで鋳造を繰り返すも、何度も失敗して天井まで鉄湯が吹き上がる――。ジオラマではその決定的瞬間を再現しています。
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こちらのラジオラマもユニークですよ。トヨダG1型トラックの修理現場に向かい、スーツ姿で走っているのは喜一郎氏。お客様第一の精神から、トラックが故障し、迷惑をかけた顧客に自ら謝罪すると同時に"どのような故障が生じたのかを自分の目で確かめ、改善していきたい"という喜一郎氏の強い思いがうかがえます。
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1/5車両模型展示も見ごたえ十分です。なかに、こんなかわいらしいピンク色のクルマを発見。1939年(昭和14年)製造のトヨタAE型乗用車(新日本号)。こちらは100台しか生産されなかった、レア中のレア車両。当時はピンクのほかに、黒、紺色も走っていたのだそう。
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このほか、室内には喜一郎氏学生時代のノート展示があったり(必見。直筆のノート展示があるのは、全国でもこの施設だけとか)、
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喜一郎氏手描きの文章や、創業期の資料(レプリカ)を手にとって見ることができる「資料閲覧コーナー」もあります。
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トヨタ創業展示室は、一部個人所有物(喜一郎氏学生時代のノート、家族写真など)を除いて一般撮影OKです。
トヨタ創業展示室の横には、鞍ヶ池アートサロンがあります。ここではトヨタが所蔵する絵画コレクションから、年4回、テーマを設けて企画展が開催されています。
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トヨタ創業展示室入口前に展示されている2台の動力織機と自動織機は、実際に稼動させることもあるのだそう。
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トヨタ博物館やトヨタテクノミュージアム産業技術記念館に比べると決して広いとは言えませんが、創業当時のトヨタを詳しく知ることができる、見ごたえのある施設です。
◆エンジニアたちが集まり、議論を重ねた別荘
さて、屋外へ出て、旧豊田喜一郎邸に向かいます。この建物は、昭和8年、喜一郎氏が名古屋市郊外の八事・南山町に建てた別荘。
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設計は、鈴木禎次氏。鶴舞公園奏楽堂・噴水塔、旧名古屋銀行本店、松坂屋本店などを手がけた、名古屋を代表する近代建築家です。この洋館、細部にわたってじつにオシャレ。
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半地下にあたるこの部分は、アントニオ・ガウディ作品を彷彿させる洞窟風デザインになっています。
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1Fは居間、食堂、台所、サンルーム、2Fは和室、風呂、トイレという間取り。和洋折衷の建築スタイルで、昭和8年の建築物ながらDK部分にはカウンターキッチンが施されており、和室にはモンドリアンの作品「コンポジション」から着想を得たモダンな欄間があしらわれています。外からサンルームを覗いてみると、今でも植物が生き生きと育ち、手入れされていました。いいなあ。住んでみたい!
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当時、喜一郎氏は、会社が休みの日などにここにエンジニアたちを集め、車両開発の相談をしていたのだそうです。残念ながら内部は非公開ですが、年に一度(晩秋)は5日間ほど特別公開があります。
喜一郎氏の思いがあちこちから伝わってくるトヨタ鞍ヶ池記念館。敷地内を散策していると、ふいに「やあ、いらっしゃい」と笑顔で現れそうな気さえしてきます。施設をのんびり1周し終える頃には、きっと誰しもが彼のファンになっていることでしょう。
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マツモト
からみかりんへの返信
| 2012年1月30日 09:49
| 返信
やはりリピーターさんでも気づきにくい場所だったのですね。。みかりんさん、コメントありがとうございます。
しかもさっそくお出かけくださったようで、ブログを書いた甲斐がありました。
うれしいです。
せっかくの充実した施設なので、みかりんさんのように
積極的にお出かけしてくださる人がもっと増えてくれたらいいなと思います。
みかりん | 2012年1月28日 19:44 | 返信
こんばんは★
こちらでこの情報をみて、早速今日行ってきました
鞍が池公園は何度も行ってるのに、こんな場所があるとは・・・
もうビックリです。
素敵な場所でした。
ありがとうございました。