(取材日:2012年1月11日)
◆"白しょうゆといえば碧南"の理由とは?
碧南市が白しょうゆ発祥の地だということはご存知でしたか? 白しょうゆは、一般的な濃口醤油に比べて色が白く(淡く)、素材のもつ色を損なわずに調理できるのが大きな特長の1つ。そのため、料理を美しく仕上げたい料亭や料理旅館、うどん屋・そば屋など、プロの料理人からの需要が多い調味料です。濃口醤油の塩分は16%なのに対して白しょうゆは18%。一方、糖度も濃口醤油が3%なのに対して16%と高く、料理にコクが出るのも特徴。一見薄味かと錯覚してしまう白しょうゆですが、じつは中身は濃いんですね。一般的な濃口醤油の原料が小麦5:大豆5の割合でつくられるのに対し、白しょうゆは小麦9:大豆1。大豆のアミノ酸が着色の原因になるため、小麦が主原料の白しょうゆは、白く仕上がるんです。
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それではなぜ、白しょうゆが碧南で生まれ育ったのか? それには3つの理由があります。1つめは、矢作川水系の良質の地下水に恵まれた土地であること。2つめは、米・大豆・小麦の安定購入が可能だったこと(矢作川流域は穀倉地帯)。3つめは、衣浦港に面し、製品を全国に運べる環境にあったこと。半田市、武豊町などにも醸造メーカーは多いですが、同様に碧南市にも白しょうゆをはじめ、たまり醤油、味噌、みりん、日本酒などの醸造メーカーが健在なのです。
ヤマシン株式会社は、白しょうゆを最初につくった老舗中の老舗メーカー。今も昔ながらのスタイルで白しょうゆを製造しており、その工場見学ができるとのこと。さっそくお邪魔してきましたよ。
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同社の創業は、江戸時代(享和2年)。
「当初は味噌、たまり醤油、みりんなどの醸造に携わっていましたが、大正末期、新川町の内藤弥作さんという方が、現在の金山寺味噌に似た味噌からしみ出してくるたれにヒントを得て、その製造方法を弊社の前身である鳥居商店に教えた。これが白しょうゆ製造の始まりと伝えられています」とおっしゃるのは、工場を案内してくださった同社の池崎重之さん。
工場見学は、一般観光客でももちろん可能。事前に予約をすれば確実ですが、当日飛び込みでも対応可能とのこと。所要時間は約30分。工場内は撮影もOKなんだそうですよ。衛生上、キャップをつけて見学スタートです。
◆昔ながらの杉樽で仕込まれる白しょうゆ
一歩工場の中に入ると、どこからともなくいい香りが漂ってきます。最初に見せていただいたのは、原料庫。手前にある袋が大豆。奥に並ぶ緑色の大きなケースが小麦。当然のことながら、白しょうゆメーカーでは小麦のほうが多いです。
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白しょうゆは、材料(小麦・大豆)の精選、炒熱、脱皮、浸漬、蒸煮、放冷の工程を経た後、種麹をつけて製麹(せいきく)させます。製麹の工程は、約3日かけて行うんだそう。やっぱり白しょうゆは、この段階でも全体的に白っぽいんですね。
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工場見学の一番の見どころは大きな仕込み樽が並ぶ風景ですが、そこに向かう途中で、完成したばかりの製品の、出荷作業現場に遭遇。箱に詰める作業はもちろん、瓶の首部分についているミニ冊子「白醤油お手軽レシピ」まで、1つひとつ手作業で行っていたのにはビックリ! お仕事中にもかかわらず、来客を見かけると、みなさん「こんにちは」と笑顔で挨拶をしてくださるので、なお感動...。
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醸造蔵にやってきました。大きな仕込み樽が並ぶ様は、それだけで大迫力です。昔ながらの杉樽による天然醸造を行っているのが、同社の白しょうゆづくりにおけるこだわり。製麹を終えた麹に塩水を加えて仕込み、ここで約3か月熟成します。杉樽は、約80本あるそうです。
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運がいいと、見学の途中で、できたてほやほやのおいしい「一番汁」を樽から直接味わうことができますよ。見学の中でも一番好評なのが、この瞬間なのだそう。一番仕込みを終えたあとさらに熟成させ、再度塩水を加えて二番仕込みに入ります。残念ながらこの日は味わえませんでしたが、一番汁と二番汁とをブレンドした白しょうゆはJAS規格や上級品・特級品として製品化されているほどなので、そのお味はきっと格別なはず!
ハシゴを登って、樽の上を覗かせていただきました。白しょうゆの熟成期間は3か月と八丁味噌などに比べて短く(八丁味噌は2~3年)、表面が空気に触れて酸化しないよう、カバーがかけられています。まんべんなく塩水に浸すことが目的なので、味噌樽のように石を積み上げる必要はありません。
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醸造蔵を出たところで、天日干しされている謎の藁を発見。なんだろう?と尋ねると、樽の底にこの藁が敷いてあり、ろ過装置の役割を果たしているんですって。
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仕込みを終え、ろ過・精製された白しょうゆは製品ボトルに充填され、出荷に備えます。その一方、ろ過後に樽に残ったものもあるわけで。というわけで、これが精製後の樽に残った醤油粕。
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これ、とってもいい香りなんですよ。魚や野菜を粕漬けににしたら、きっとおいしいだろうなあ...。実際、お漬物屋さんでも活用されているそうですが、何しろ大量に発生するため、ほとんどは配合飼料に使われたり、産業廃棄物として処分されるのだそう。うう、もったいない...。どなたかうまい利用法はないですか?
というわけで、こちらが出来上がったヤマシンさんの製品です(一部)。白しょうゆだけではなく、白しょうゆにだしを加えた「白だし」や、たまり醤油にかつおだしを加えた「土佐しょうゆ」なども手がけています。もちろん新製品開発にも積極的で、写真左端の「生姜白だし」は、昨年11月に誕生したばかりのニューフェイス。そのほか、「白ぽん酢」もあるんだそうですよ。がんばってます。
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残念ながら、敷地内では白しょうゆを使った料理を食べられないのですが、受付事務所で商品購入はできます。ヤマシン社長ご自身が「将来的にはショップやレストランを併設したい」という夢を持っていらっしゃるそうなので、白しょうゆの実力を示すためにも、それはぜひとも実現させていただきたいものです。
◆和食だけでなく、ジャンルを問わず使える調味料
白しょうゆは戦前までは高級調味料でしたが、今ではスーパーにも並び、一般家庭でも気軽に使えるようになりました。一般的な醤油に比べてまだなじみが薄い白しょうゆではありますが、じつは和食だけでなく、洋食ならチーズやホワイトソースと相性バッチリ、中華ならラーメンスープなどの隠し味に使うと、いっそう料理に旨味とコクが出るんだそうです。以前、ハシモトさんが大浜てらまち巡りの途中で、碧南市の新しいご当地グルメ、へきなん焼きそばを食べていましたが、へきなん焼きそばにも白しょうゆは、欠かせない調味料。どのお店のへきなん焼きそばにも、必ず使われています。じつは今回取材にお邪魔したヤマシンをはじめ、碧南市内の白しょうゆメーカーが集まり、「自宅でもへきなん焼きそばを作れるように」と、現在オリジナルソースを共同開発中なんだとか。それは完成が楽しみですね。
これまで白だししか使ったことのないマツモトも、今後は自宅で白しょうゆを試してみようと思います。せっかく愛知県が誇る特産品なんですもの、おうちごはんにも、もっともっと積極的に活用したいものです。
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