独自路線の企画展に注目!「INAXギャラリー名古屋」

(取材日:2010年9月3日)

◆"優れているのに、未知なる存在"をすくい上げるギャラリー
INAXギャラリー名古屋は、1988年にオープンしたギャラリー。 "建築とデザインとその周辺"をテーマに、毎回ユニークな企画展を開催しています。
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名古屋市中区にありますが、1Fと2Fの半分がINAX名古屋ショールームになっているため、愛知県民でもいまだここにギャラリーがあることを知らないという人も...(ギャラリーは2F奥にあります)。それはもったいない。なぜならばこのギャラリー、企画展の内容が毎回とってもシブイ!から。しかも入場は無料。ほかの美術館や博物館では絶対にやらないような"知られざる" "知る人ぞ知る"おもしろいテーマばかりで、マツモトは毎回内容を楽しみにしています。まずはこの企画展が、どうやって生まれてくるのかが気になっていました。

「INAXギャラリーは東京、大阪にもあり、各地のギャラリーディレクターと書籍担当者が集まって3か月に一度、企画会議をするんです。建築・デザインと生活文化に関するジャンルで、優れているのにあまり注目されていない人やコトを各自が探し出し、それを持ち寄って議題にあげます。企画展開催と同時に、図録『INAX BOOKLET』を編集し、INAX出版から発行もしています。一般的な美術館・博物館では、特定の作家や時代・様式をテーマにした"作品ありき"の企画展を開催することが多いのですが、当ギャラリーの場合はそうではなく、ギャラリースタッフの企画・視点を主体にした、ニッチな部分をすくい上げている点が大きな特徴ですね」とおっしゃるのは、INAXギャラリー名古屋のギャラリーディレクター、大原結さん。

こちらが今回の企画展に合わせてできあがった図録。ときおり仕掛け本的なデザイン処理がされていて、見て&読んで飽きないつくりになっていました。過去に開催された企画展の図録もすべて揃っているので、ここで気になる図録を買うこともできます。
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ちなみにこれまで開催された企画展を少し紹介すると――『デザイン満開 九州列車の旅 展』、『ゑびす大黒 ―笑顔の神様― 展』、『糸あやつりの万華鏡 ―結城座375年の人形芝居― 展』など。たしかにニッチなジャンルですよね! でも、おもしろい。ではさっそく、現在開催中の企画展をちょっと覗いてみましょう。

◆現在「幕末の探検家 松浦武四郎と一畳敷」展 開催中
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企画展は3か月に一度の割合で開催されます。INAXギャラリー名古屋では、現在『幕末の探検家 松浦武四郎と一畳敷 展』を開催中(11月18日まで)。ところで松浦武四郎って......誰?(汗)

調べました。松浦武四郎は、伊勢国一志郡須川村(現:三重県松坂市)出身の、江戸時代・幕末から明治時代にかけて活躍した探検家。幼少時代、生家前で伊勢参りに訪れる人々をたくさん見たことから、旅やほかの土地に対する興味を強く抱くようになり、16歳のときに江戸への一人旅を決行。以来、全国を旅するようになります。そして28歳のとき、蝦夷(現在の北海道)が国防の危機にさらされていることを危惧し、自ら蝦夷へと出発。地形をはじめ、動物や植物、風俗、習慣、土地に残る伝説に至るまで微々微細に調べあげ、記録しています。じつは「北海道」の名付け親は、この方だったりします。

特別に許可していただき、展示作品を撮影させていただきました。松浦武四郎さんの自画像です。どうやら北海道探検時代のもの。髪もひげも、おかまいなし。きっと大変だったんでしょうねえ...。
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これまで彼があまり知られてこなかったのは「活躍の範囲が広すぎ、何の人というカテゴライズがしにくかったせいでは?」と、大原さんは推察。一般的には"探検家"と紹介されますが、彼の守備範囲はじつに幅広く、興味深いものばかりです。

こちらは、オロッコ人の生活風習を観察してまとめた『北蝦夷余紙』からの1枚。お守り人形や子ども用のゆりかごなどが描かれているのですが、さきほどの自画像と一変して、なんともカワイイ~。今回の企画展では、貴重な原画も多く展示されているのが特長です。
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蝦夷滞在中には、地図製作もしました。彼の偉業の1つです。△マークが付いているのは集落。赤い線は道、緑色は山の部分で、色が濃いほど高いことを表しています。
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篆刻を作るのも得意でした。これは、彼の雅号の1つですが「馬角斎印」と彫られています。そう、彼の晩年の雅号は「ばかくさい」...。相当茶目っ気のある方でもあったようで。
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なおかつ、編集者としての資質も併せ持っているのです。写真は『蝦夷行程記(上・下)』。これは地名と里程が書かれている現地ガイドブックで、お隣の資料と大きさを比較してみるとわかるのですが、携帯するのにかさばらないよう、ちゃんと小型化されている! 安政3年(1856年)にしてすでにこの発想。すばらしいです。
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そして、今回の目玉が、企画展タイトルにも入っている『一畳敷』。これは松浦武四郎の終の棲家の書斎で、これまで彼が歩いてきた全国各地の旅の思い出の集大成でもあります。その一畳敷がギャラリー内に原寸大で再現されていて、実際靴を脱いで中に入ることもできます。
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畳の上に、ごろんと寝っころがってもOKなんだそうです。この一畳の広さ...なんだかやけに落ち着く......。天井を見上げると、雲龍が舞っていました。これは紀伊熊野本宮誠證殿扉を利用したもの。ここでは写真パネルで再現されています。
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現在、本物は東京都三鷹市の国際基督教大学の敷地内にあり、国の登録文化財になってます。
この書斎は91のパーツからできていますが、京都嵐山の渡月橋の橋げたや伊勢神宮、出雲大社、厳島神社など、有名な寺社仏閣から古材を集め、作ったもの。なんだか足を踏み入れるだけでご利益がありそうですね~。人の心を掴むのが巧みだった、彼の人徳あってこその業です。

余談ですが、この一畳敷、武四郎自身の遺言では「自分と一緒に燃やしてくれ」とされていたもの。しかし唯一無二の貴重な建築物であることから燃やされずに保存され、現在に至っています。ご本人の心中は知る由もありませんが、もしかしたら現代の我々は、目にすることがなかった貴重な作品でもあるのです。

◆「INAXショールーム」併設ギャラリーゆえに、こんな特典(?)も...
ギャラリーを一歩外に出ると、INAX名古屋ショールームが目の前に広がっています。2Fは、タイルやバスタブの一部などが展示。1Fは、空間提案型のショールームになっていて、最新のキッチン、トイレ、浴室が並んでいます。こちらも無料で見学することができます。
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いずれもすぐに妄想の世界に突入できるステキな製品ぞろいでしたが、INAXギャラリーを訪れた際に、ぜひとも利用してみてほしいのが、1F、2Fで実際に使うことができるトイレ。覗いてびっくりでしたが、1個室ごとにみんな違うデザインなんですよ~。INAXの比較的新しい製品を体験できちゃうわけです。写真左は2Fに設置してあるトイレの1つ。右は、高齢者でも楽に使えるバリアフリートイレ。車イスで利用できるトイレも併設されていました。
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こんな特典(?)は、企業ショールームにあるギャラリーならではのこと。ちょっと楽しいです。

INAXギャラリー名古屋の次回企画展、詳細は未定ですが、大正~昭和にかけての戦前の客船インテリアをテーマにした内容になりそうとのこと(12月上旬予定)。むむ、確かにそれも未知の世界だし、おもしろそう......。今後も引き続き、INAXギャラリーから目が離せません。


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