緑に囲まれて美味しい空気を吸いたい!働きすぎ(?)なのか、体が警告を発しているのに気づきました。そんな時、とっておきのスポットを発見。原生林のある設楽町の「きららの森」です。そこには手つかずの自然が今も静かにありました。緑の木々、鳥や虫たちの共生する素敵な場所で、元気をいただきました~♪
(取材日:2010年5月30日)
◆温暖化・生態系の変化を実感
名古屋から車を走らせること、約2時間。
山間の道をぐんぐん行くと、美しい光景があちこちに見えます。
県道33号(瀬戸設楽線)沿いに段戸湖が見えてきました。水面に緑と空が映り込んで、それはキレイです。静寂の中でルアー釣りをする人が時折、竿を回して湖面に釣り糸を垂れています。絵に描いたような風景に、思わずため息が出ました。
その湖のほとりに、「きららの森」の観光案内所がありました。駐車場に車を停めて、案内所で森の散策ルートマップをゲット!
とはいっても、自然に疎いコバヤシ。せっかく森の中を歩くならと、予め設楽町役場にお願いして、「ふるさとガイド」の加藤博俊さんに案内をお願いしました。

加藤さんは環境省自然公園指導員などを務める森のエキスパート。この日は奥様も同行してくださって、3人で森の散策に出発です♪
が、案内所の壁に気になる看板を発見。「熊に注意!」。ひぇ~、熊、出るの?
「5月2日の早朝に熊が出たという話を聞きましたが、自分で見るまでいるとは言えませんね。他の動物と見間違えたということも考えられますからね」と加藤さん。
設楽町出身で、若い頃から国内のアルプスの山々を登山し、何度も熊に遭遇したという加藤さんの言葉を信じて付いていきます。何とぞ、よろしくお願いします~!
「きららの森」は愛知高原国定公園の中にあります。東海自然歩道も通っていますから、名古屋や静岡方面からも多くの人が自然に親しむウォーキングに訪れます。この日も、身支度をばっちり整えたウォーカーの皆さんの姿を目にしました。
散策ルートは全体を回ると約5時間。今回はそのうちの1時間の約2㎞の最短コースを選択。大半は東海自然歩道です。ここなら初心者コバヤシも歩けそうです。
森に入ってすぐ、不思議な植物に遭遇。
「横から見ると、竜の頭のように見えるから"銀竜草"と呼ばれています。散策路にはあちこちで見えますよ」と加藤さん。
さらに行くとキノコも。
多彩な植物に出遭えそうです♪
その先で加藤さんは森を指差しながら、「右が人が植えた木々、左が原生林です。人が入らないのは全国でも珍しいんです。この辺りは江戸時代は徳川幕府の直轄、明治時代に国の管理となり、一般人が入れなかったんです。明治初期には5600haの広さがあって、富士山の青木が原の1.5倍。大正時代になるとこの地区だけ保護され、だんだん減って、現在の原生林は130haです」。
なるほど、そうやって原生林が守られてきたのですね。知りませんでした。
先ほどの段戸湖がすぐ右手に見えます。湖でルアーをしている人は、腰まで水に浸かっています。
ニジマス、イワナ、ブラウントラウトなどが釣れるそうです。
「この湖は戦後開拓された池。浅いんですよ。田んぼに水を引くため、ここで水を温めていたんです」
そうか、だから腰まで浸かって釣りが出来るんですね。ガッテン!ガッテン!
それにしても、初夏とはいえ冷たくないんでしょうか?
段戸湖の水辺には5月初めに水芭蕉の花が咲いたり、6月には空中で産卵するモリアオガエルが見えたりするのだそうです。そんな場面もいつか目にしたいものです。
「この辺りも温暖化でずいぶん変わってきています。30年ほど昔、私が中学生の頃、冬にはここが天然のスケートリンクでした。今はもう凍結しません。いろんな昆虫も30年前から200mぐらい標高を上げました。その跡にそれまでいなかった昆虫がとんどん入ってきて、生態系が変化しているんです」
ちなみに、この地点の標高は約950m。だから、森は夏でも涼しく過ごせるのだそうですが、温暖化の影響のジワジワと押し寄せていたのですね。
◆原生林の木たちに出遭う
ここから待望の原生林へ。
「この森の散策では木がメーン。およそ300種類ありますよ」と加藤さん。
え~、そんなにたくさんあるんですね。
数メートル進むと、モミとツガの大木がそびえ立っていました。まっすぐ空に向かって伸びています。
「このモミで320~330年。ツガもそれに近いですね」と加藤さん。へえ~、そんなに長い間、この地に生きているのかと思うと、威厳さえ感じます。
「モミは昔は建材として使われていましたが、外国からの木材が輸入されるようになると、使われなくなりました。(モミの木の寿命の)350年で倒れるんです。ここで見てほしいのが葉っぱ。若いモミは葉の先にトゲがありますが、年をとるとトゲがなくなります」
あら、ホント。葉っぱの先端のトゲが、年老いた木の葉にはありません。
「トゲがなくならないのは、人間だけかな(笑)」という加藤さんの言葉に、ふ~む、コバヤシも納得です。
森の中には倒木もそのまま横たわっています。原生林では人の手を加えてはいけないことになっているからです。
倒れて苔むしている大木は、長い時間をかけて再び大地へと戻っていくのだそうです。人間の一生では計りしれない大自然の営みがここにありました。
木の幹に生える苔にも目を奪われました。触ってみると、まるで絨毯のようにフカフカです。
「梅雨時は苔がキレイですよ」。森の散策には、そんな楽しみもあるんですね。
ミズキの木にも"出遭い"ました。
「枝を切ると水がひたたり落ちるんです。そのぐらい水を吸い上げるんで、ミズキと呼ばれています」。そのままです。
お次はキハダの木。加藤さんはリュックの中から、自宅の庭にあったキハダの枝を取り出して、ナイフで表皮を削り出しました。すると、中が黄色いんです。その皮を噛んでみて、と断片を手渡され。どれどれ...、ちょっと苦いです。
「漢方薬にも使われています。胃の薬になるんですよ」。へえ~!
この所、暴飲暴食で胃腸の弱っているコバヤシ。何度も噛み締めました。
ヒノキの木の前では、ほのかにいい香りもします。
「自然保護のため木に触らないという考えもありますが、私はいろんな木に触れて、匂いをかいでこそ、自然が分かると思っています。それぞれの木に表情がありますから、自分の体で感じてみてください」と加藤さん。はい、できるだけ触っちゃいます。
大きなコブのあるブナの木にも出遭って、ビックリ。枝が摺れたりして幹に傷ができると、それを覆うようにコブができるのだそうです。ブナの再生能力の凄さに感心させられました。
うお~、こんなおサルさん風のコブ↓も発見!
「ブナは森にとって役立つ木なんです。枝が漏斗(ろうと)上になって雨水を集めて幹を流れます。その水が流れるのを観るのみいいものです。幻想的で。そして葉っぱは腐りにくいので、分厚く積もって、いい腐葉土ができて、そこに雨水が保たれます。それが地下にしみこんで、何十年、何百年をかけて川に流れ出る。こうやって森が守られ、自然が守られてきたのです。これが生物多様性の基。動物、植物が共存しているということです」

なるほどね~!
「だから、森といえばブナ。自然といえばブナ。ブナは自然のバロメーターです」
そのブナも太古の昔には標高の高いアルプスにあったそうです。それが氷河期に生息地を下降させ、そしてまた温暖化で標高の高いところへ帰っていく。我々、人間の想像を超えた地球のサイクルがあったわけです。ほ~ほ~!スケール巨大すぎて、頷くしかありません。自然の偉大さにおののくコバヤシです。
昨年秋の台風18号で倒れたブナの巨木がそのままになっていました。幹周り4mというこの森で一番太かった木です。
加藤さんはブナの木の長年の労をねぎらうように「お疲れさま」と優しく声を掛けていました。
そうそう、ブナの実は生で食べることもできるのだそうです。ご存知でしたか?
「癖がなく、森の木で一番おいしいです。標高800mぐらいで食べられる実がなるので、愛知県では奥三河だけですよ」
◆野鳥や動物たちにも出遭えます
森を歩くと野鳥のさえずりが聞えてきます。
キレイな声で鳴くカケス、ホ~ホケキョとウグイス、いろいろな鳥の鳴き真似が得意なソウシチョウなど、100種類余りの鳥が確認されているそうです。
残念ながら、この日、コバヤシはその姿を確認することはできませんでした。それでも、野鳥の姿をカメラに収めようという愛好家の方たちには何度もすれ違いましたから、野鳥写真の撮影にも絶好のポイントなんでしょうね。
散策路の片隅に土が掘り返された場所を発見。それはイノシシがミミズを探した跡だそうです。えっ、イノシシってミミズ食べるんですか?
「大好きですよ。ブナの実も大好き」と加藤さん。
イノシシがミミズを食べるなんて、まったく知りませんでした。ちょっと衝撃です。
「熊出没の情報がありますが、この辺りにはイノシシやニホンカモシカもいるので、間違えられたのかもしれませんね」
ニホンカモシカって特別天然記念物の!? それはそれでスゴイことじゃないですか!
最後に「きららの森」の名前の由来を伺ういました。
加藤さんがまたまたリュックから取り出したのは、キラキラ輝く石。
「この辺りは雲母片岩が多い事で知られています。"きらら"というのは雲母のこと。それで"きららの森"という名称になったんです」と加藤さん。
すると、これまで一緒に森を歩いてくださった加藤さんの奥さまも「木漏れ陽のキラキラという説もあるんですよ」とナイスフォロー。どちらの意味も充分納得できます。
およそ1時間で巡れるコースでしたが、このほかにもいろんな説明をしていただきながらだったので、気が付くと3時間経過。土の上をこれだけ歩いたのは、久しぶりだった気がします。
「この森は観光スポットというより、癒しの空間です。森を散策するだけでもよいのですが、ちゃんとした指導員がいると森のことが分かって、より自然を楽しんでもらえます。この森を説明するには3日はかかりますから、また遊びにきてください」
3日間かかるのも納得。はい、これに味をしめて、またお邪魔したいです。
その時もどうぞ、森のガイドをお願いします~♪
森のすぐ近くには、豊川市野外センター「きららの里」があります。ログハウスの建物が周辺の緑に馴染んで素敵です。
設楽町の土地を借りて、豊川市が運営しています。主に小学生の野外体験に利用されていますが、豊川市民以外の一般の利用も可能です。ここを拠点にじっくり森の散策をするのもよいですね。
生物の多様性、自然の偉大さを感じる「きららの森」の散策、お薦めです~♪
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