瀬戸市南東部にある里山「海上の森」―。数百種類といわれる植物や多数の昆虫、魚類、動物が生息する自然の宝庫である。ベテラン自然観察指導員の大島啓孟さんの案内で分け入ると、可憐な花や鳥たちが春を謳歌していた。(2010年3月21日取材)
海上の森は530ヘクタールの広大な里山で、大半が愛知県の県有地だが、一部私有地もある。かつては焼き物製造のための薪の採取によって「はげ山」となったが、植林などによって緑が回復。地下水の噴出による湿地帯が多くあり、多様な植生が維持されている。
愛知万博(2005年)で一躍、脚光を浴び中高年を中心とした自然観察会が週末を中心に開催されている。私が今回参加したのは尾張自然観察会の大島さんが毎週第3日曜日に行っているもの。
愛知環状鉄道の山口駅から歩いて20分、午前10時前に集合場所の「海上の森駐車場」に着くと、大島さんや参加者が三々五々到着。この日はあいにくの曇天だったが、別のグループも続々と集まり森に入っていった。
「毎週末は、自然観察のハイカーが多数来て、この駐車場がいっぱいになる。最近は県外の人も多く、この間はスイス人女性を案内しましたよ」と大島さん。
この駐車場は海上の森の西端にあり、今回は春の花が多く見られる森の南西部を歩く。約4時間の行程だ。
ホーホケキョとウグイスが鳴いたのを合図に、いざ出発。舗装道路を少し歩いてから、脇道の山道に入っていく。
鬱蒼とした樹林の中、なだらかな勾配を登っていく。
「ああ、キブシですね」
立ち止まった大島さんが植物の名を教えてくれる。
これはミツバアケビ―。
そして、これはオオカメノキ―
こちらはシュンラン―。
ひときわ美しいコバノミツバツツジ―。
次々に見つけた花の名を教えてくれる。
「私は元々、調理師で植物の名は知りませんでしたが、自然観察指導員をしているとみなさんに聞かれるものだから自然に覚えたんですわ」と大島さん。
林の中に入っていった大島さんが岩の塊のようなものを見つけた。
「これは鎌倉時代の茶碗で山茶碗といわれるものの残骸。この辺りには多くの窯があって、これはうまく焼けずに捨てられたものです」
この森が古くから「里山」として人間とともに生きてきたことを伝える「タイムカプセル」だ。
やがて標高166・5メートルの三角点に到着。「これを見てください」と大島さん。
「これはネジキ。新芽が赤いことから別名・祝い膳の赤い箸といいます」
本当にいろいろな植物があるものだ。
再び森に入っていくと樹林の間でシデコブシが蕾をふくらませていた。
湿地帯に入ると水色のかわいい花が咲いていた。ハルリンドウ―。
「日が差さないと開かない花です」
湿地帯は色とりどり。
これはアカミゴケ―。
こちらはネコノメソウ―。
こちらはアカガエルの卵―。もう孵化が始まっている。
赤池という溜池に到着すると「カワセミがいますよ」と大島さん。
木の止まった宝石のような鳥を見つけたが、カメラを構えた瞬間飛び去ってしまった。
昼過ぎに海上の森中央付近にある「里山サテライト」(愛称・かたりべの家)に到着。古民家を活用した建物で現地の活動拠点やハイカーらの休憩所になっている。
お握りをほおばっているとホウジロが飛んできて、近くに止まった。
一服したあと、大正池へ。池の中に立枯した木々がある幻想的な池だ。
観察会も終わりに近づいた。かなり山道を歩いたはずだが疲労感がない。森から生命力を分け与えてもらったのかもしれない。
貴重な自然が息づく海上の森。法律はもちろんのことマナーを守って自然観察を楽しみたい。
問い合わせ
あいち海上の森センター
住所 瀬戸市吉野町304-1
電話 0561-86-0606


























