(2010年3月3日取材)
「あいちアートの森」の取材で一色町佐久島を訪れた記者ですが、島内でもう一つ面白い企画を見つけました。
さすが"アートの島"です。
今、佐久島では森の中に建てられた祠をまわる「みかんぐみ佐久島弘法プロジェクト」を開催中。
海辺や港の魅力は「アートの森」でもご紹介しましたが、ここは豊かな森も持っている島なのです。
古くから残る弘法の祠とともに、新たに作られた現代アートの祠を巡り、歩いてみます。
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佐久島のメインストリート「フラワーロード」から脇にそれると、森の中に入る「弘法道」が始まります。
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作品をまわる前に、佐久島弘法の歴史を少し。
島に八十八か所の小さな弘法の祠が建てられたのは90年ほど前の大正5年。
大正時代のはじめ、日本は観光ブーム。「弘法大師生誕1000年」にあわせ、全国各地に四国八十八か所巡りを模した弘法巡りが建設されました。
この「ご当地遍路」は、新旧あわせて愛知県内だけでも70ほど存在しています。
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佐久島では、島内3つの山(大山、秋葉山、富士山)と東西の集落に八十八か所の小さな弘法大師の祠が作られました。
戦前には本土から弘法巡りの巡礼者たちが多く訪れ、阿弥陀寺の宿房に滞在してにぎやかに島を巡ったと伝えられています。
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祠を眺めながら歩いていると、それぞれの山の社にたどり着きます。
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一つ一つの祠は島民の個人管理。近年過疎化と高齢化によって、世話人のいなくなった祠もあり、「阿弥陀寺」の大師堂に集められ保管される弘法大師像が増えてきました。
現在、像が奉られている祠は、50数か所まで減っています。
今回のプロジェクトでは建築家チーム「みかんぐみ」が、弘法道に新たな「祠」を設計。
島の歴史と自然を満喫できる散策道でもある弘法道を、蘇らせる試みです。
「みかんぐみ」は神奈川県横浜市にある建築設計事務所。「愛・地球博」では「トヨタグループ館」の建築設計を手がけました。
メンバーは加茂紀和子、曽我部昌史、竹内昌義、マニュエル・タルディッツの4人の建築家です。
現代の建築家による祠のある風景は、変わらない弘法巡りの伝統に寄りそいながら、佐久島の未来の風景を作っていきます。
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島の西側、大山弘法道の西端の三河湾を見渡す高台に、加茂紀和子さん制作の祠「ほりぞん」が建っています。
名前の由来は英語の「ホライゾン」でしょうか。
素材は向かいの知多半島で焼かれたレンガタイル。かつての佐久島弘法の祠も、レンガで作られています。
祠まで続く階段も加茂さんの制作。海水浴場に使っていた階段をリサイクルして作りました。
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タイルを積層させた祠の上部に、円形の穴が空いています。
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穴の向こうは、美しい水平線。
その先には紀伊半島。弘法大師空海が修行の場として開いた霊場、高野山の方角です。
「空と海」の境界に夕陽が沈みかける頃、きらめく海面の様子は絶景だそうです。
大山弘法道からフラワーロードに戻りました。
マニュエル・タルディッツさん制作の祠「空海郵便とビリー・ザ・キット」を見てみましょう。
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奥に祠と同じ形の小屋。中にヤギがいます。
まずは祠から。
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郵便ポストの形です。内側は金色の塗装。
弘法大師像の背面は、砕いた鏡が貼り付けられています。
晴天の下、光を放つ弘法さまです。
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やぎの名前はビリー。立派な角です。
ビリーの小屋もマニュエルさんが設計しました。
誰もが童謡「やぎさんゆうびん」を思い出すのではないでしょうか。
マニュエルさんはパリ出身。フランスにもこの歌はあるのでしょうか。
ビリーは元々、雑草を食べるために飼われていましたが、飼い主が亡くなり、面倒を見る人がいなくなりました。
島の人達がビニールの雨よけなどを作ったものの、ビリーの行く末は心配の種。
そこで島に滞在して祠を制作中のマニュエルさんに、ビリーの家を一緒に作ってくれるよう相談、快諾いただけたのだそうです。
かくしてビリーは流浪の危機から、実力派建築家の建てた小屋に住めるセレブヤギになったのです。
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写真を撮っているうちに、寝てしまいました。住み心地がいいのですね。
ところで、ビリーの小屋の斜め向かいに気になるものが。
たぶん訪れた人は、全員気になると思います。
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足湯「一休さん」と「仮面ライダーV3」の背中に乗る遊具。
アートだと思い込んで撮影しましたが、これは隣の家のご主人の個人所有。
本物の足湯と遊具です。
島を少しでも楽しくしようと、作ったのだとか。
家の敷地内に、太陽光発電装置があります。
島の子どもたちは、足湯につかりながら木琴を叩いて遊ぶのでしょうか。
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再び森の中。東側の弘法道に入ります。
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秋葉山弘法道のみかん畑に沿って進むと、竹内昌義さん制作の祠「銀」があります。
三河湾を望む見晴らしのいい場所。
晴れの日は一日中、太陽の光に満ちています。
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祠はステンレス製。正二十面体の宝石のようなデザイン。
形や色、素材は竹内さんのインスピレーションから始まっているのですが、こうして弘法大師像が納まると、いろいろ連想が沸いてきます。
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例えば弘法大師の法号は「遍照金剛」。
遍く照らす金剛石(ダイヤモンド)、この祠にぴったりです。
美しい銀色から、弘法大師と水銀鉱脈との関係を想像する人もいるそうです。
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みかんの最盛期ではありませんが、鮮やかな橙色を撮影。
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秋葉山から富士山に向かう途中に、阿弥陀寺があります。
管理する人がいなくなった弘法大師像は、こちらに保管されています。
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お堂の中を見せていただくと、たくさんの像が。
今回のプロジェクトで祠に入った4体も、お堂に保管されていたものです。
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阿弥陀寺の脇をのぼり、富士山弘法道に入りました。
成長した木に持ち上げられ、傾く祠。長い歴史を感じます。
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仲良く二つ並んだ祠も。
残るは曽我部昌史さん制作の祠「青」。
この作品は一番、見つけるのが大変だと思います。
森の中、丹梨海岸に下っていく小径にあります。
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どこにあるか分かりますか?
右側の足元、土の奥に祠があるのです。
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「青」のイメージは、蝶や貝など佐久島の自然がもたらす色彩から。
佐久島には、秋になると海を渡る蝶、アサギマダラが訪れます。
海辺のアカニシ貝からは紫色の染料をとることができます。
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中を覗き込むと土中に埋め込まれている割に、明るい印象です。
実はこの祠には、明かり取りの窓がついていて、窓は土中を上に抜け、太陽の光を取り込んでいるのです。
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さて、「青」を発見できた人は、もう少し先まで進んでみてください。
森を抜けると、美しい丹梨海岸が見えます。
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曽我部さんは祠に貼り付けるユニークな形の石を募集しています。
丹梨海岸で面白い形の石を見つけた人は、「へんな石コンテスト」に応募してください。
応募用紙は、東西渡船場、弁天サロンで配布中です。
応募期間は3月26日までです。
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無事、4か所を見ることができました。
弘法巡りをしてから、島の地図を見ると何だか四国の形に見えてきます。
佐久島の自然、歴史、アートをまとめて堪能できる「佐久島弘法プロジェクト」。
これはおすすめ企画です。
弘法道をすべて歩くと、片道約5㎞、徒歩だと約2時間。
山道が多いので、歩きやすい靴と服装を選びましょう。
「佐久島弘法プロジェクト」は3月31日までですが、
4つの祠は島の常設展示になり、スタンプラリーも引き続き楽しむことができます。
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