碧南市「哲学たいけん村 無我苑」で瞑想する

(2010年1月24日取材)
昨年から愛知県内の観光情報発信の仕事をしておりますが、観光資料を見た時から、とても気になっていた場所があります。
それが本日の目的地。碧南市の「哲学たいけん村 無我苑」です。
哲学の体験――。難しそうです。しかし「たいけん」を平仮名にしているところに、柔らかさも感じます。
行ってみれば、楽しく素敵な体験できるのではないか。
そんな気がして、碧南まで来てしまいました。

「哲学たいけん村 無我苑」は、思想家の伊藤証信(1876~1963)が1934(昭和9)年に開いた研修道場「無我苑」があった場所に、遺族からの寄贈を受けて碧南市が再建し、1992(平成4年)に開苑したものです。
哲学者の梅原猛さんが名誉村長を務め、何度も講演を行っています。
証信先生は明治から昭和初期にかけて「無我愛」を提唱し、仏教に限らずキリスト教、西洋哲学など幅広い研究と思索を続けた哲学者です。
東京、京都などで精力的に活動した後、関東大震災を経て西端(現在の碧南市)に移り住み、思索に臨みました。
やはり立派な背景を持った施設でした。
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駐車場を出ると「研修道場 安吾館」がありました。
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かつて証信先生を慕う地域の人々が研修に励んだ地。
蘇ったこの安吾館は、木造平屋建て、数寄屋造り。
安吾の名称の由来ですが、梅原猛先生が作家・坂口安吾を敬愛していたからという説と、この地の住所が「碧南市坂口」だから、という説があります。
ここでは年に数回、哲学講座などが開かれます。
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この日は三味線、琴など和楽器の演奏が行われていました。
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隣接した「立札茶室」では、椅子に座って日本庭園を眺めながら、気軽に抹茶を楽しむことができます。呈茶料は抹茶とお茶菓子で250円。
庭園に出てみましょう。
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冬のさなかでも、美しい庭です。
庭の中に茶室「涛々庵」があります。
茶室に繋がる露地を通って、近づいてみます。
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無我苑の露地囲いは、外露地を高い塀で囲い、外界と隔絶された空間を形成した全国的にも珍しい二重露地になっています。
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外露地に入ってみました。
静かな庭園の中に、さらにきりっとした静謐な空気を感じます。
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正面には内露地へ向かう小さい入り口。
置石がある場合は、通ってはいけないのでしょうか?
とりあえず脇を回って内露地の中にも入ってみます。

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内露地。
これまた風流で落ち着いた空間です。

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内露地から見た茶室。
しばらく見ていたくなります。
「お茶」というものは、待っていただいている時から、もてなしが始まっているのでしょうね。
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「市民茶室 涛々庵」です。
先ほどの立札茶室でも呈茶を楽しめますが、こちらでは月1回、市民茶会「涛々庵茶会」を開催しています。
400円で本格的な茶の湯が体験できます。

今日は市民茶会があるとのこと。お願いして撮影させていただきました。
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記者も一緒に正座し、お茶をいただく。
参加した皆さんはお茶やお菓子だけではなく、茶道具や掛け軸、器などを話題に茶会を楽しんでいます。
記者も目の前の器をしげしげと見る。
緊張しつつも、心がやすらぐ時間です。
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今月の涛々庵茶会は「初釜」だったため、お料理が付いていました。
右下の朱のお椀に入っているのは、お酒です。
残念ながら今日は飲むわけにはいきません。

お茶を堪能し、心が落ち着いた記者は、いよいよ哲学を体験しにいきます。
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庭園の外へ出て、草木の間を進む。
足の運びが滑らかになった気がします。気のせいでしょうか。
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「瞑想回廊」に到着です。
建物の右側、庭園方面に向かって突き出している黒い筒のような部分が気になります。
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建物の反対に回ると、こちら側にも突き出しています。
中に入ると、どんな感じなのでしょうか。
手前の芝生は「瞑想の丘」です。
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館内にはアリストテレス、西田幾太郎、ニーチェなど和洋の哲学者の名言が並んでいます。
面白いところでは、音楽家のシューベルトや、俳優チャップリンの言葉もありました。
名言を読みながら2階へ上がっていく。
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先ほどの筒状の部分は展示ギャラリーになっていました。
円形の空間そのままの不思議な眺め。
先ほどの涛々庵から見ると、展示ギャラリーの両端の窓を通して、さらに向こうの風景が見えるように作ってあるのだそうです。
今は間の木々が元気に生長したため、見えないのでした。
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ギャラリーでは、企画展示「立ち現れる空間 久野利博展」が行われています。
3月28日まで開催です。

瞑想(メディテイション)ルームと書かれた部屋を発見。入ってみる。
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部屋の左右には秋岡美帆さんの作品。
カメラを動かして木を撮ることにより、形も色も境界を失い、揺れ動いているような印象を生み出しています。
室内に置かれた椅子は不思議な形です。
これはイタリア、ルネッサンス発祥の地フィレンツェの富豪コシモ・デ・メディチが、自らの瞑想のために制作させた椅子をイメージしてデザインしたそうです。
かの椅子はイタリアのサン・マルコ修道院に現存しているとのこと。
ひとまず座ってみました。
まず、そもそも足を揃えて絵の方向へ座るのか、椅子をまたいで絵と横向きに座るのか、わかりません。
最初に右の絵を向いて座り、しばらくして左の絵を向いてみる。
ふと見ると、左奥のテーブルの上に「瞑想の方法」という説明書が。
「ライト」と「ディープ」の2通りの瞑想があったので、「ライト」を試してみます。
説明書を読んでみる。
「ステップ1。第1チャクラから第7チャクラを、下から上へ背骨に沿って意識します」
ライトで既にチャクラ。証信先生、難しいです。
気になって「ディープ」を読むと、各チャクラごとに意識すべきことがあるようです。
記者なりにまとめてみますと、エネルギーの流れをイメージしながら、ゆっくり呼吸することが肝要。
ゆるやかに息を吸い、吐きます。「自分にとって、いらないと感じるものを一緒に放出するイメージ」とあります。
大きく息をつき、上を向くと丸い灯り窓から光が差し込んでいます。
何だかすっきり。「いらないもの」が多かったのでしょうか。
とにかく来てよかったです。
トイレに入り、鏡に映った顔を見る。
少し知的になった気がします。気のせいでしょうか。

瞑想のほかにも、心や身体をリラックスしたい人には「リラクゼイション・ルーム」があります。
この日は屋久島の音を聞きながら、ゆったり椅子に横たわれるようでした。
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瞑想回廊の外に出る。
回廊の前には池。竹林が美しい。
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池の中にある瓦は、旧無我苑の屋根に使っていたもの。
歴史を感じます。
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「瞑想の丘」には、コンクリート彫刻。清野祥一さんの作品です。
清野さんもギャラリーに展示していた久野さんも、ちかく開催される「あいちアートの森・常滑プロジェクト」の出展作家さんです。

安吾館、涛々庵の和風の趣と、瞑想回廊の未来的な建築、瞑想の丘の現代アート。
和洋や新旧のイメージを混交させるのではなく、それぞれの建物が意図を持ってデザインされているから、落ち着きや浮遊感が生み出されているのでしょう。
無我苑の「哲学たいけん」は、講義や、手取り足取り説明してくれるのではなく、訪れた人が自分の目で見て、感じて、考える体験でした。
苑内パンフレットには「あなたのたいけんを、どのように生かすかは、あなたにかかっている」と書いてあります。
今回の体験で思ったことは「気になる場所があったら、どんどん取材をお願いしてみよう」。
自分が昨日より積極的な記者になった気がします。これは、たぶん気のせいではありません。


さて、無我苑から続く「哲学の小径」は、蓮如上人ゆかりのお寺「応仁寺」と「花しょうぶ園」、県下最大規模の自然湖沼「油ヶ淵」を結んでいます。
積極的に小径を行く記者は、応仁寺でありがたい物を見ることになりました。
その出来事は、後日アップの「20年余ぶりに帰った蓮如上人の掛け軸~碧南市・応仁寺」にて。


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