幻の酒を求めて~犬山市・荵苳酒

 荵苳酒(にんとうしゅ)という酒をご存知だろうか?江戸時代から戦前まで尾張や紀州、浜松など各地で製造された酒で、健康にことのほか気を使った徳川家康も愛飲したという。
 日本で唯一、江戸時代からの製法で醸造販売している店が犬山市にあると聞いて「その味やいかに」と訪ねた。

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 名鉄犬山駅から国宝・犬山城に向けて歩いていく。城の東の城下町には古い町並みが続く。その一角、練屋町に荵苳酒を製造する「和泉屋小島醸造」がある。慶長2年(1597)に創業。現在の当主・小島まさ子さんは14代目にあたる。

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 店構えからして威厳がある。店部分は明治28年(1895)の濃尾地震で破損後に再建されたものだが、住居部分は江戸期のものという。
 店内に入ると江戸時代にタイムスリップしたよう。ひときわ大きな陶器は江戸時代のもので量り売りの際に使われたもの。

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 荵苳酒はスイカズラを調合した酒。古来、滋養が豊富で「不老長寿の銘酒」とうたわれた。小島家の荵苳酒は犬山名産として名古屋や江戸に舟で送り出された。藩主の成瀬家は将軍や各大名に寒中見舞いとして献上した。

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 その製法は「家伝の秘宝」として公開されていない。最近、浜松市で復活し販売されているが、小島醸造さんによれば「その味は当店とは違う」とのこと。まさに日本唯一の銘酒である。

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 果たして、いかなる味なのか? 賞味してみた。「冬でも部屋を暖かくして、燗をせずに飲むこと。アルコール度数が24度あるので、ストレートがきつかったら氷を浮かべるか、炭酸水で割ってください」と、その飲み方を伝授された。

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 ストレートで飲んでみた。陶製のビンのコルクを抜くと甘い香りを発した。色はウイスキーに似た琥珀。とろりとした口当たり。飲みやすい。体が徐々にぽかぽかしてきて、まさに「大名気分」であった。


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