昭和レトロの処方箋~北名古屋市歴史民俗資料館「昭和日常博物館」

 失われゆく昭和時代の日常品などを収集、展示した北名古屋市歴史民俗資料館に出かけた。うわさはかねがね聞いていたが、そのセンスのよさと「志の高さ」に打ちのめされた。(2009年12月8日取材)
 同資料館は北名古屋市東庁舎(旧師勝町役場)に隣接する北名古屋市東図書館の建物の3階にある。エレベーターに載って3階に到着。ドアが開くと、ホーロー看板に赤いポストの「昭和の町並み」が...。昭和33年生まれ。「20世紀少年」の私には、直球ど真ん中の原風景だ。映画のセットみたいだが展示品はすべて「本物」―。

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 同資料館は平成2年(1990)に師勝町歴史民俗資料館として開館(平成18年3月、北名古屋市誕生に伴って名称変更)した。当初は、家屋の建て壊しの際に不要になった農具や生活用品などの寄贈品や縄文時代からの埋蔵文化財を展示していた。平成5年、昭和時代を伝える日用品などを展示した特別展の開催を機に、「昭和」をテーマにしたユニークな博物館に変貌した。それはその後の「昭和レトロブーム」のさきがけとなった。

 「博物館は失われていくものを残すのが役割。粗大ごみとしてどんどん廃棄処分されていく昭和の日用品を残して伝えていくことが急務と考えた」と学芸員の市橋芳則さん。さまざまな企画展示を通して一般市民らから昭和の日用品が寄贈されて現在、昭和20年代後半から30年代の品々約10万点を所蔵し企画ごとに1万点が展示されている。

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 入り口の「昭和の町並み」を抜けて順路に従って進むと「昭和のお茶の間」のコーナーがあった。今や「星一徹がキレたときにひっくり返したもの」というギャグの世界で知られるぐらいになってしまった卓袱台。それを中心におひつ、テレビ、ハエ取り紙などがお茶の間の脇を固めている。

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 さらに進むと旧式の洗濯機や冷蔵庫といった家電類が、家電化前の道具とともに陳列されている。続いて懐かしいおもちゃコーナー。さらにカレー、ビールなど飲食物のパッケージや空き瓶、殺虫剤やアイロン、学用品などが展示されている。「渡辺のジュースの素」など自分の少年時代の濃厚な記憶として残っている品の前ではつい立ち止まってしまう。

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 「見学者のみなさんそうですよ。思い出はそれぞれにあります」と案内してくれた学芸員の伊藤明良さん。展示品の説明書きはあえてしていない。「アイロン新旧」「ばんごはんはカレーだ」などとタイトルがつけてあるだけ。なかには「説明書きがないので分からない」という見学者もいるが、お年寄りや中年の見学者たちが一緒に来た子や孫に説明することでコミュニケーションを高める効果を狙っている。

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 感心したのは展示方法だ。こまごまとした古い日用品、おもちゃ類はまとめて展示しただけだと「ごみの山」になってしまう。かといって、きれいに並べてしまうと「生活のにおい」がなくなる。ここでは「猥雑さ」と「センスのよさ」を程よくミックスして展示されており、命を吹き込まれた展示品が見学者に語りかけてくるようだ。

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 資料館の奥には、入り口付近とは別にもう一つ、「昭和の町並み」を再現した部屋がある。こちらは理髪店や履物店など横丁のようになっていて、板塀の隙間から民家の裏庭を覗き込めるような仕掛けもある。

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 同資料館では年に数回、企画展を開催している。取材当日は「昭和レトロ雑貨大全」を開催していた(2010年1月31日まで)。近くにある名古屋芸術大学デザイン科学生も参加して懐かしく、デザイン的にもかっこいい昭和の雑貨などを生活に取り入れてみては―という提案をしている。

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 各地の「レトロ資料館」の中には、懐古趣味、オタク的なコレクションに陥ったものが散見されるが、北名古屋市歴史民俗資料館のすごさは所蔵品を用いてお年寄りの「回想法」に活用していることだ。

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 同資料館によると回想法とは1960年代にアメリカの精神科医ロバート・バトラー博士が提唱した非薬物療法。お年寄りが、昔懐かしい品々を見ながら語り合い、記憶を引き出し思い出を共有することで楽しい時を過ごす。それが認知症や閉じこもりの予防、治療になるという手法だ。同資料館は回想法を国のモデル事業として、見学を呼びかけたり、「小学校の思い出」などテーマ別に資料を収納した「回想法キット」の貸し出しを行っている。「昭和のお茶の間の再現にあたっても、お年寄りたちの記憶を参考にしました」と伊藤さん。

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 回想法が必要になるのは、もう少し先の私ではあるが、同資料館の懐かしい品々を見学して脳ミソがフル回転したようだ。見終ると頭の中がパンパンになった。そして風船がしぼむように次第に興奮が収まると、幸せな気分が残っていた。

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コメント

志央☆ | 2009年12月17日 20:12 | 返信
レトロな展示物はその時代に生きていない私でも「なつかしいなぁ」と言ってしまいそうになります^^
昭和が懐かしいと言われますが、平成でももう懐かしいものは懐かしいですよね
ブームが一瞬で去っていったものは特に;
私が大人になるころには一体どんなものが懐かしいと感じるようになるのでしょうか…

横山正樹 | 2009年12月15日 13:36 | 返信
先だって、テレビを観てたら、子供のお使い番組で、子供が困った様子でした。
私も、何が困ったか、分からず、そのまま観ていたら、どうも、電話の使い方が分からない様子でした。
まぁ、子供だから、電話の掛け方や番号も、覚えてないようなぁと思ってましたが、どうも、それとも違うみたいです。
不思議に思って、観続けていると、公衆電話が、昔の電話で、指でダイヤルを回す物で、番号は見えるのですが、回すと言う行為が理解できなかったみたいです。
私は、歳がいっているので、昔の黒電話も知ってますが、今の子は、黒電話自体を見たことがないので、ダイヤルすると言う行為が分からなかったようです。
こうやってみると、如何に時代が変遷してしまったかを感じた次第です。
もう、昭和はレロトの時代になってしまっているんでしょうね。

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